9/16/2010

脈と寿命

東洋医学で脈と言えば、次の6種類が基本とされる。
即ち、脈位:『浮、沈』、速さ:『遅、数』、強弱:『虚、実』である。
ところで、脈が速いと短命であると聞いたことはないだろうか。
数脈(90回/分以上)の人は、遅脈の人より短命と言うことである。
ゾウの時間ネズミの時間」(中公新書、筆者:本川達雄)によると、ほ乳類は、心臓が一定数打つと一生を終えると書いている。
人間もほ乳類の仲間なのだから、この説は、人間にも当てはまるのだろうか。
常識的に考えてもこの説は人間にも当てはまりそうである。
身近な例として、針金を手で切断する場合がある。
針金は、両方の手でかなり早く曲げ伸ばしを繰り返すと切断する。
同じ時間をかけても、かなりの回数を素早く繰り返すとそのうちに曲げ伸ばしをした部分は弱くなって、そこから切断する。
心臓の心筋も伸縮を早く繰り返していると早いうちに疲労して駄目になるだろうとは容易に想像できる。

東邦ガス診療所(名古屋市)の林博史所長は、時間生物学の概念を取り入れ、哺乳類ごとの体重や心拍数、心周期(1心拍にかかる時間)と寿命との関係を分析し、人間が一生の間に打つ心拍数は「23億回」とはじき出した。
この説によると、人間の寿命は下記の数式で示されるそうだ。
 寿命(年)=4376÷(1分間の脈拍数)

ちなみに、心拍数が70回/分だと、寿命は、62.5年になる。
ただし、心臓病の専門医の間では、人間の一生の心拍数に決まった限界があるとの考えに否定的な意見が多いそうだ。心拍数の増減は自律神経に左右されており、一部の不整脈のように心臓自体に問題があることは少ないからというのがその理由。

また、脈拍を速くする主な要因として以下の4つがあげられる(いずれも自律神経のバランスを崩す)。
(1)喫煙 (2)肥満 (3)高血圧 (4)糖尿病
従って、脈が速いから短命になるのではなく、速い人は生活習慣病を抱えている場合が多く、結果的に死亡リスクが上がるとしている。

東京都済生会中央病院の三田村秀雄心臓病臨床研究センター長も「心拍数は1分間70回前後が適切だが、何年も前から速い、遅いのであれば、それほど深刻に考える必要はない。むしろ脈は健康状態をみるマーカー。安静時でも急に速くなった状態が続くようだと、体に異変が起きているかもしれない」という。

「毎日、分速80メートルの早歩きを最低20分続ける。3~4カ月たつと、脈拍数は5~10減る。マラソン選手のように心臓が鍛えられるわけではないが、自律神経の過剰反応は抑えられる」と助言する。

(日経新聞web版、9/12付け 「脈速いと短命」は本当?)

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